【CM関節障害】雑巾しぼりや皿洗いで親指が痛い?ズレの方向と整体的アプローチを徹底解説!

手関節について

はじめに|親指の痛みは関節のズレが原因かもしれません

日常生活でよく聞く「雑巾をしぼると親指の付け根が痛い」「皿洗いをしているとズキッとする」…これらの症状の原因として多いのが、母指のCM関節(Carpometacarpal joint)障害です。
この関節は高い可動性を持つ反面、構造的に不安定なためズレ(位置異常)を起こしやすいという特徴があります。

本記事では、CM関節のズレる方向とそのメカニズム、どんな症状が出るのか、整体的にどうアプローチできるのかを、研究報告や解剖学的根拠に基づいて解説します。


CM関節とは?|母指の重要な関節の構造と特徴

CM関節は、第一中手骨(母指の骨)と大菱形骨(手根骨)との間にある関節です。サドル型の関節構造を持ち、つまむ・握る・回すといった動きに広く関与しています。

  • 関節の動き:屈曲・伸展、外転・内転、対立(つまむ動き)
  • 主な支持組織:前斜靭帯(anterior oblique ligament)

この靭帯がCM関節の安定性において最も重要であり、ズレ(亜脱臼)を防ぐ役割を持っています。


どの方向にズレやすいのか?|解剖学的・力学的背景

CM関節のズレやすい方向は、主に以下の2方向です。

  1. 掌側(手のひら側)へのズレ
  2. 橈側(親指側)へのズレ

このズレは、以下のような動作によって起こりやすくなります。

  • 雑巾を強くしぼる動き
  • 繰り返しのつまみ動作
  • パソコンのマウスを長時間使う姿勢
  • スマホ操作で母指に持続的な負荷をかける姿勢

前斜靭帯が徐々に緩んでくると、第一中手骨が掌側かつ橈側に滑りやすくなり、軽度の亜脱臼(subluxation)を起こすようになります。


論文から見るCM関節障害の進行

  • Eaton & Littler(1973) による分類では、前斜靭帯の緩みによるズレがCM関節障害の初期とされ、進行に伴って骨の変形や滑膜炎が発生する。
  • Halilaj et al.(2014) の研究では、日常的なつまみ動作による反復ストレスが、靭帯機能の劣化と骨変位を引き起こすメカニズムがMRI画像で示されています。

これらの研究は、日常生活での反復的なストレスが関節構造の変化に直結することを強く示唆しています。


ズレた結果どうなるのか?|よくある症状と進行パターン

CM関節のズレによって見られる症状は以下の通りです。

  • 親指の付け根(CM関節部)のズキズキした痛み
  • 特に「つまむ・ひねる・握る」動作で増悪
  • 朝や長時間使用後のこわばり感
  • 関節部の出っ張り(変形)
  • 進行すると関節運動の制限と握力低下

整形外科では、**母指CM関節症(母指CM関節OA)**という診断名がつくこともあり、変形や骨棘が進行しているケースも多く見られます。


ズレやすい人の特徴とは?

  • 更年期以降の女性(靭帯が緩みやすくなる)
  • 手作業の多い職業(調理、清掃、事務作業)
  • 育児中で手を酷使する女性
  • 関節弛緩性が高い体質の人(過伸展など)
  • 手首や母指の外傷歴がある人

整体的なアプローチ|CM関節のズレをどう整えるか?

1. 手根骨のアライメント調整

  • 大菱形骨の位置異常をチェックし、掌側にズレた第一中手骨を背側に軽く牽引するモビライゼーションを実施。
  • 関節包内の可動性(dorsal glide)を評価。

2. 前腕からの筋膜リリース

  • 長母指外転筋・長母指屈筋の過緊張をリリース
  • 橈側手根屈筋や浅指屈筋も緊張が高いとCM関節の不安定性を助長する

3. 運動指導とテーピング

  • 母指の屈曲・内転を最小限に抑えるテーピング
  • 筋力強化:母指外転筋、手内筋群(とくに母指対立筋)

日常生活での予防法

  • 雑巾しぼりや皿洗いでは「親指を内に巻き込まず、指全体で支える意識
  • スマホやパソコンでは母指の根本に荷重をかけすぎない姿勢を工夫
  • 肘から先の前腕回内筋群の柔軟性を確保し、母指に偏った負荷を避ける

まとめ|小さな関節のズレが大きな不調に

CM関節の位置異常は、軽視されやすい小さな不調で始まりますが、進行すると慢性痛・変形・握力低下など日常生活に深刻な影響を与えます。

整体師としては、患部だけでなく、全体の筋膜連鎖や動作習慣まで含めた評価とアプローチが大切です。
関節のズレは構造と機能のバランス崩壊のサインです。それを早期に捉え、適切に導くことが、症状の改善と予防につながります。


参考文献

  1. Eaton RG, Littler JW. “A study of the basal joint of the thumb.” J Bone Joint Surg Am. 1973.
  2. Halilaj E, et al. “Thumb carpometacarpal joint osteoarthritis: prevalence, biomechanics, and treatment.” Clin Orthop Relat Res. 2014.
  3. Neumann DA. Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitation. 3rd Edition. Mosby, 2017.
  4. Morizaki Y, et al. “Thumb carpometacarpal joint instability: biomechanical rationale and clinical implications.” Hand Clinics. 2013.
タイトルとURLをコピーしました