「パソコンやスマホを長時間見ていたら、目の奥がズキズキ痛む…」
「眼精疲労かと思ったけど、頭痛もあるし、首も重だるい…」
そんな経験はありませんか?
このような目の奥の痛み、実は単なる目の使いすぎだけが原因ではない可能性があります。注目すべきは「三叉神経」と、それに関連する「側頭筋」や「咬筋」といった咀嚼筋の緊張です。
今回は、三叉神経を中心に、顔面や頭部の筋肉との関係を最新の研究も交えて掘り下げていきます。
三叉神経とは?〜顔面感覚を司る最大の脳神経〜

三叉神経(Trigeminal nerve)は、第5脳神経とも呼ばれ、顔面の感覚の大部分と、咀嚼運動の一部を担う非常に重要な神経です。
この神経は3本の枝に分かれます。
- 眼神経(V1):目の周囲、額、頭皮の前部の感覚
- 上顎神経(V2):上顎、頬、鼻の感覚
- 下顎神経(V3):下顎、咀嚼筋、口の中の感覚
このうち、**眼神経(V1)**が刺激されると、目の奥の痛みやズキズキとした感覚が引き起こされることがあります。
目の奥が痛むのは「神経の巻き込み」が関係している?

頭や顔、首の筋肉の緊張は、知らず知らずのうちに三叉神経の経路を圧迫・刺激してしまうことがあります。特に注目すべきは、「大後頭神経」との関係です。
▶︎ 大後頭三叉神経症候群(GOTS)
GOTS(Greater Occipital Trigeminal Syndrome)は、大後頭神経が首の筋肉の緊張や頚椎の不具合によって圧迫されることで、三叉神経核に過剰な刺激が加わり、顔面や目の奥に痛みを引き起こす現象です。
参考文献:
- Yamada et al.(2020)“The trigeminocervical complex: Convergence of nociceptive information from cervical and trigeminal nerves in headache disorders.” Pain Reports, 5(3), e814.
- 山田朱織枕研究所(2023)「大後頭神経三叉神経症候群の可能性」
つまり、首や肩こり、背中の緊張が強くなると、大後頭神経を介して三叉神経が過剰に興奮し、目の奥の痛みや片頭痛を引き起こすことがあるのです。
側頭筋・咬筋の緊張がなぜ目に影響するのか?

側頭筋はこめかみに位置する筋肉で、咀嚼運動に大きく関与しています。咬筋は頬のあたりにある筋肉で、歯を食いしばると盛り上がってくるのがわかる筋肉です。
これらの筋肉は**三叉神経(特に下顎神経)**の支配を受けており、慢性的に緊張していると神経にストレスを与えます。
- 歯ぎしり(ブラキシズム)
- 食いしばり癖
- 顎関節症
- ストレス性の咀嚼筋緊張
これらの要素が側頭筋・咬筋を緊張させ、その緊張が三叉神経の興奮を引き起こし、目の奥や側頭部、こめかみなどに痛みが出るのです。
研究データ:
- Raphael KG et al.(2016)“Orofacial pain and its association with headache: A review of clinical and pathophysiological relationships.” Cephalalgia, 36(9), 885–898.
- Sessle BJ.(2000)“Acute and chronic craniofacial pain: brainstem mechanisms of nociceptive transmission and neuroplasticity, and their clinical correlates.” Crit Rev Oral Biol Med, 11(1), 57-91.
咬筋と側頭筋の過緊張が引き起こす症状

- 目の奥のズキズキした痛み
- こめかみの締め付け感
- 片頭痛
- 眼精疲労と錯覚しやすい痛み
- 首の後ろの張りと連動する痛み
つまり、目の奥の痛みを引き起こす根本原因が、首や咀嚼筋にあるケースは少なくありません。
痛みを軽減するセルフケア方法
1. 咬筋・側頭筋のマッサージ
指で円を描くように、こめかみや頬の筋肉を優しくマッサージして緊張をほぐします。
2. 姿勢改善
デスクワーク中は猫背にならないように注意し、頭の位置が前に出すぎないようにします。モニターは目線の高さに。
3. 頭頸部のストレッチ
首の後ろを中心に、軽いストレッチや温熱療法を行いましょう。
4. 食いしばり対策
就寝時のマウスピースや、日中に無意識の歯の接触を減らす「Tooth Contacting Habit(TCH)」対策も有効です。
まとめ

目の奥の痛みは、単なる眼精疲労ではなく、三叉神経の刺激や咀嚼筋の緊張、頚部の神経との相互作用が大きく関わっているケースがあります。
- 三叉神経は顔面の広範囲の感覚を支配しており、特に眼神経が刺激されると目の奥に痛みを生じやすい
- 側頭筋や咬筋の緊張は、三叉神経を介して目の奥の痛みを引き起こす
- 姿勢やストレス、食いしばりといった日常的な要素も痛みの増悪因子
- セルフケアや生活習慣の見直しで改善が期待できる
このような視点をもって痛みの原因を見直すことで、より効果的な対策につながる可能性があります。慢性的に目の奥が痛む方や、頭痛が頻発する方は、ぜひ一度、首や咀嚼筋の状態を確認してみてください。
参考文献
- Yamada et al. (2020). The trigeminocervical complex: Convergence of nociceptive information from cervical and trigeminal nerves in headache disorders. Pain Reports, 5(3), e814.
- Raphael KG et al. (2016). Orofacial pain and its association with headache: A review of clinical and pathophysiological relationships. Cephalalgia, 36(9), 885–898.
- Sessle BJ. (2000). Acute and chronic craniofacial pain: brainstem mechanisms of nociceptive transmission and neuroplasticity, and their clinical correlates. Crit Rev Oral Biol Med, 11(1), 57-91.
- 山田朱織枕研究所. (2023). 「大後頭神経三叉神経症候群の可能性」. https://makura.co.jp
- 赤岩鍼灸接骨院. (2023). 「目の奥が痛む原因とは?首こりと大後頭三叉神経症候群(GOTS)」
※この記事は整体師、理学療法士など、身体に関わる専門職の皆さま向けに執筆されています。実際の臨床では個別評価と問診を行った上で、必要に応じた施術や医療機関への紹介を行ってください。